ねこ科たぬきの部屋

ホラーとプロレスが大好きな男が南の島から短編の怖い話奇妙な話をお届けします

MENU

ねこ科たぬきの部屋番号011

裏アカ太郎

 

むかーしむかーし、あるところに

毎日刺激もなく、ただ、ただ、生きている男がいた。

 

 

朝から夜が来るまで働いて帰っては寝るだけの生活。

SNSで愚痴を言うのが唯一の楽しみであった。

 

そんなある日の出勤途中

 

「あひゃひゃひゃ!!!」

 

と笑い声が聞こえてきた。

 

男はその声の元へ向かっていった。

 

 

すぐに怪我をしている亀の姿が目に入った。

亀はめったに見ることのできない、それはそれはレアな生物だった。

 

その亀の周りでは童達が大騒ぎしている。

 

「うおおおぉ!!!珍しい!」

「かっけぇ!!すげぇすげえ!!」

 

傷ついてることなんぞ意に介さず、童達は写真を取りまくっている。

 

男はふつふつと熱いものがこみ上げるのを感じた。

 

 

なんだこのガキたちは!!!

 

 

同じような毎日を、ただ、ただ、過ごしている男にも、心の奥底にしまい込んでいた熱い気持ちがあったのだ。

 

 

男は大きく呼吸をし、気合いを入れ、凛々しい表情でゆっくりと、大きく、亀と童達に向かって歩きだした。

 

 

−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 

翌日【珍しい亀見っけた】というタイトルで男の上げた動画がSNSで拡散され、大バズりした。

 

 

男は承認欲求が満たされていく感覚を覚えながら、コメント欄を封鎖し、鍵垢にして

また同じような事の続く日常へ戻っていった。


f:id:nekokatanuki:20220903202404j:image

 

 

 

 

 

 

プライバシーポリシー